COTAの手記
東京病院 行くとちょうどおじいちゃんはカーテンの向こう、看護師さんに診察か何かをしていた。おばあちゃんと部屋の中・カーテンの外側で終わるのを待っていた。しばらくすると「川里さん終わりますね」というような声が聞こえ、おじいちゃんの声で「どうも……(以下聞き取れず)」という声がした。そして栄養を入れる管を手で外さないため(拘束用)の手袋を外してもらった。
先週同様に少しだけ目があって、目が起きていたせいか、行くとすぐにわかったようだ。握手して来たことを伝えると「ありがとう」「わざわざ」とはっきりと言った。後でおばあちゃんと話したが、「今日はよく喋っていた」と喜んでいた。ツタヤに借りに行ってiTunes(クラウドミュージック)に取り込んでおいた伍代夏子さん、天童よしみさん、千昌夫さん、水森かおりさんの曲を聴かせた。
なんとなく、僅かだが、千昌夫が一番心に響いているようだった。先週、花の家から持って来た「メガネ」がおいてあったので、せっかくなので「つけてみる?」と聞くとあんまり反応がなかった。
なのでメガネをつけてみた。メガネをつけるときはしっかり目を瞑っていたのでそれもわかるようだ。
しばらくしておばあちゃんに「これは老眼鏡だもんね。あんまり意味ないよね」というような話をしていると、「いらない」か「取ってほしい」というようなことを言った。
「そりゃあいらないよね」とちょっとふざけた感じでオレが笑いながらメガネを外すと、おじいちゃんはにこーっと笑ってくれた。なんというかこういう言い回し、表現が難しいが、おじいちゃん譲りだ。
いわゆる普段から無表情・ポーカーフェイスなので笑顔を見たのは久々だったと思う。
そしてそのまま本当に帰ろうとして、女性の看護師さんも部屋を出ようとした間際、「川里さん。『きょうは奥さん来ないですか』って言ってましたよ」「『今日はおばあちゃんは来(き)ないのかね」と言ってましたよ」とおばあちゃんに伝えた。それはおばあちゃんにとっても思ってもみなかったことだったようで驚いていた。
とにかく今日はよく喋っていたことを喜んでいたようだが、「よく喋ったら色々言われていーやだー」「わたしがくるか聞いていたなんて」「看護師さんにそれをいうなんてー」と嫌そうな口調で言っていたが、内心はすごく喜んでいるようだった